地球の皆さんさようなら

polnareff2006-03-18

 この台詞は昨日の画像のモデル、壁抜け男ことキング・アラジンが狂気の箱抜け脱出へ向かう際の言葉である。マルセル・エイメ原作のレミング壁抜け男ではない。おのれの棺桶に響く幻の喝采に耳を傾け「聞こえます聞こえます」と死神を笑顔で迎える結末。そして同じ台詞は1977年小沼勝監督「少女地獄」のラストにも繰り返される。火星という名の埋立地で心中自殺した歌枝とアイ子の魂が宇宙の果てで囁いて、この地獄の季節は幕を閉じるのである。これらの上昇と下降は、埴谷雄高「死霊」での「一旦あちらに預けておく」観念として浮世に暇を告げたのであろう。
 脳髄の写真が幾つもの断章を示して、暗転。満天に瞬く星は黙り込んで、奮い立つ男たちの声を見守っている。丸太のように投げ出されているものは、遠州森の石松の肉体。闇だまりに潜んだ隻眼の男は死して両眼を開いて「此れなむ都鳥、口惜しや吉兵衛兄弟」と洩らし、万延元年水無月拾七日夜更け、おのれの墓石を削岩される幻に息絶えた。三十石船にて押寿司を手に左へ傾いて本町を歩む。
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