啓明のルシファー

polnareff2005-10-03

「キャッシーのものしり館④」

    • 「わが悪魔兄弟の呪文」:二十世紀最大の魔術師と謳われたアレイスター・クロウリー詩篇「ルシファー賛歌」は、魔王ルシファーを光の象徴として僥倖と昇天を描き、ハリウッドの映画監督ケネス・アンガーに霊的啓示を与え「ルシファー・ライジング」へと導いた。映像の光学的魔術によって異貌の神を召喚しうる可能性を秘めた「ルシファー・ライジング」は、しかしルシファー役の俳優ボビー・ボーソレイユとアンガーの訣別によって製作中断を余儀なくされる。ボーソレイユは自分の出演シーンのフィルムを盗み出し、火星の隕石が数多く発見されることでも知られる南カリフォルニアモハベ砂漠の何処かに埋め、永遠に封印してしまったからである。死をも考える程に失意のアンガーであったが、それでも残りのフィルムを編集し、11分の作品として発表する。それが1969年に発表された「わが悪魔兄弟の呪文(INVOCATION OF MY DEMON BROTHER )」である。これは「オルタモントの悲劇」を予期したかのようにローリング・ストーンズとヘルス・エンジェルスが錯綜し、ホモセクシャルベトナム戦争などの映像の断片が、ミック・ジャガーによる単調なインダストリアル・ノイズと共にコラージュされた魔術的な作品である。「ルシファー・ライジング」が産んだシャムの双子の一人は、このように破壊と死を象徴していた。ボーソレイユがチャールズ・マンソン・ファミリーに加わり、シャロン・テート事件を起こしたのも同じ時期である。Cocksucker Blues

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