15ヶ月ひとくくり昆虫の生活

polnareff2006-02-06

 午後、今北君より電話。お釈迦様でも草津の湯でも治せぬ、恋の病に伏せっていたぼく、喋る内に俄然、元気が出てきて、雨も上がる。久々にフェルトの「ペネロープ・ツリー」でも聞いてこましたろかい。スリーヴがリチャード・アヴェドンの写真のん、探せば無かったりして。
 夕刻、十三で立ち呑み、急遽予定変更し、Rise From The Deadの名作『Music Music,Great Music Company X』を題目に、夜のしじまに向けて、ひとり喋り独演会を開始。「ちょっとおっさん、黙っといてくれへんか」との叱責に耳傾けず、何処ぞの世界からも無用のキャッチコピーを口ごもり、「海ならん凪ぎいて鳩子のさめざめとリオはおなごの雑誌です」とか「マリアの言葉にポールを握った」とか「コニー前川の魅力全開、盗聴防止のコニー電子」等々、しかしタグラグ・オフィスでの過去の記憶が甦り、ああ、ぼくは昆虫みたいやぁなどとワイワイ言うておりますれば、
「ごめん邪魔すんで」
「邪魔すんねんやったら帰ってくれへんか」
「つれないやないですか折角訪ねてきたんにナオっさん」
「おうその声はトラやないか、どないしてんフジコは元気か」
「よう言いはるわフジコ心配してくれはるんやったら、ちょお話聞いてくれはりまっか」
「ワイもあれから反省してずうっと心配してたんやでホンマやで、なっ堪忍してくれるか」
「苦労しましたけどな先月ぅ何とか夜鳴きそば屋の段ドリがつきましたんや、でも世の中うまい事いくもんやおまへんわ」
「どないしてん言うてみぃや」
「わしなぁあんさんと別れてから博打覚えましてん」
「博打やとぉトラ!われ、飼い猫のくせしくさって博打なんぞやってどないするつもりじゃ」
「あんさんが言えた義理ちゃいまっしゃろ、わしらあんさんに捨て猫のように急に放り出されたんでっせ」
 あれは三年前のことやった。大阪に何十年ぶりかの大寒波が襲ったあの日は、ちょうど節分の晩やった。突然わしら夫婦は凍えるような風の夜更けに宿なしになってしもうたんや。
「あの晩のことよもや忘れたとは言わしまへんで、わしら二匹が目に涙浮かべてあんさんにすがった時、あんさん何してくれた」
「このクソガキャ口答えすなカス、掃除機で吸い付けてやろうかしらん、腹ん立つ」
と風雲急を告げる『人情噺 ロボ侍』でありますが、遅々として進まず、丑満ちて候。
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