氏家慎次郎

polnareff2005-11-17

 アストロ球団の仇敵、峠球四郎率いるビクトリー球団のピッチャーの名を氏家慎次郎(うじいえ しんじろう)と言う。殺人的なビーンボール魔球を得意とする懲役帰りで元大リーガー、そしてその実体は昭和三年生まれの特攻くずれ。昭和二十年八月十五日に出撃予定だった彼の人生は即ち死地を探す旅に他ならず、成仏を待つ辛苦の時を歩むだけであった。しかしその旅路の果てこそ、昭和四十八年七月二十三日アストロ球場。おのれと敵の位牌二つを携えて、キャプテン宇野球一への全霊を捧げたビーンボールとして、魂の出撃をするのである。死者を弔う同期の桜と特攻隊員達の血と涙をボールに封じ込めた最後の一球、それはストレートの豪速球であった。「神風特別攻撃隊。烈風隊一番機。氏家慎次郎発進す」の台詞に涙する。尚、テレビドラマ版はデビッド伊東が氏家を演じている。
 シルベスター・スタローンが再びロッキーの続編を作っているとのニュースに因み、昭和五十四年「ロッキー2」公開記念としてリリースされた主題歌。わが胸に去来するのは善し悪しを越えた珍奇、それは体感温度で知る生温さ、半端さが全員一致したさま、横領背任疑惑が生まれる瞬間、或いはヤリ過ぎに注意しましょうなど、それらの感慨は全て此処に向けられる。岩城滉一「愛は魂」

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