EMS-VCS3

よっ、粋だねェ。黒い木目の浮かんだ囲いの何と上品なこと。艶がかってらぁな。そいつぁ樫か胡桃でげしょう。つられて思わず見上げりゃ、いきなり魂消たねェ。向こっ側を見越せそうなぐれぇに、しっかり起き上がっちゃってぇスイッチとパッチボードがあるんでやすから。しっとり濡れたプラグ姐さんのアナログにピンでも差しちゃえ、ってな按配でしょうなぁ。
♪粋な黒キャビ、見越し下のマトリクスに
プラグピンと来て穴つまみ
シンセサイザーだよ、ヴイ・シー・エスさん
故障したならお釈迦様でも
時間かかるよ、ヴイ・シー・エスさん
エー・ケイ・エスぁ、カバンだな
与三郎「え、シンセサイザーさんぇ、メーカーさんぇ、ヴイ・シー・エスさんぇ。いやさ、これ、ヴイ・シー・エス、ひさし型だなぁ。」
お富「そういうお前は」
与三郎「エイ・ケイ・エスだ」
お富「ええっ」
与三郎「おぬしぁ、アタッシュケースを忘れたか」
お富「えええ」
与三郎「しがちゃんの居ない、おはスタもあった。イーノのつらは舛添なのに、ディー・トードリッシェ・ドーリスから、タンジェリン、シュルツと30年越しで。ヴォルテージ・コントロールド・スタジオ、略してヴイ・シー・エスの称号をとり、エー・ケイ・エスのカバン型より、ヴイ・シー・エスさんのひさし型。その黒光りするサイドパネルの木目造りの囲いもの。シンセサイザーが重いたぁ、逢坂じゅんでもイーノでも毛が少ねぇ。よくまぁそっくり三者がいたなぁ。舛添、イーノじゃあトランティニアンだけ可哀相じゃねぇか。」

与三郎:え、御新造さんぇ、おかみさんぇ、お富さんぇ、いやさ、これ、お富、久しぶりだなぁ。
お 富:そういうお前は。
与三郎:与三郎だ。
お 富:えぇっ。
与三郎:おぬしぁ、おれを見忘れたか。
お 富:えええ。
与三郎:しがねぇ恋の情けが仇、命の綱の切れたのをどう取り留めてか、木更津からめぐる月日も三年越し、江戸の親にやぁ勘当うけ、よんどころなく鎌倉の谷七郷は喰い詰めても面に受けたる看板の疵がもっけの幸いに切られ与三と異名をとり、押借り強請やぁ習おうより慣れた時代の源氏店、そのしらばけか黒塀の格子造りの囲いもの、死んだと思ったお富たぁ、お釈迦さまでも気がつくめぇ、よくまぁ おぬしぁ 達者でいたなぁ。安やい、これじゃぁ一分じゃぁ帰られめぇじゃねぇか