なめくじ長屋

レコード棚から文庫本「ときめき砂絵」が出てきたのを機に、最近の入浴時には、都筑道夫の長寿シリーズ「なめくじ長屋捕り物さわぎ」を読み耽っている。時は江戸末期、神田橋本町の貧乏長屋、通称なめくじ長屋に住む、砂絵描きの浪人センセーが、神田白壁町の岡っ引き常五郎の元に持ち込まれた奇妙な事件を解決に導くという時代劇シリーズ。岡っ引きからの雀の涙ほどの心付けで知恵を貸すフリをしながら、その実は裏を掻いて外聞を気にする商家や御家人らから礼金・賄賂をせしめるという痛快感が大きな魅力。その裏で活躍する、同じ長屋に住む軽業師、河童や幽霊、野生の熊などの扮装の乞食、天狗面のお札配り、野天芝居の女形などの住人も大きな魅力だ。以前ドラマ化されたようだが、配役が気になるところである。勝手に配役すれば、月代延び放題で丸腰の浪人センセーは渡瀬恒彦、下駄新道の常五郎は橋本功、軽業師マメゾーが桜木健一というところか。しかし一体、おれは八十年代初頭に生きているのかといった所詮は妄想でありました。
▲TOP